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成果と生産性を高め、力を引き出すマネジメントのために produced by KAKEAI

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山田弁護士が教える、マネージャーのためのハラスメント講座 マネージャーなら知っておきたい! 変わりゆく、セクハラ・パワハラの定義と境界線

更新日:

 

職場で起こるセクハラ、パワハラ問題。「どこからがアウトでどこまでがセーフなのかわからない」という思いから、社員への接し方に悩んでいるマネージャーも多いのではないでしょうか。

これまで数々のハラスメント問題を取り扱ってきた山田秀雄弁護士(山田・尾崎弁護士事務所)に、セクハラ、パワハラの定義と線引きや、職場でハラスメントが起こらないために知っておきたいポイントを聞きました。

言葉だけでもNG! 現代の「セクハラ」の定義とは

「セクハラ、パワハラはハラスメントの代表です。私のところにもセクハラとパワハラは、同じくらいの量の相談があります。

セクハラは1989年に流行語大賞に選ばれて問題視されるようになった、スキャンダルの典型です。しかし近年は、セクハラに対する個々人の意識も高まっており、企業内でも浄化作用が働いてきています。故意に身体に触れたり、昇進や昇給を対価とする性的要求などのあからさまなセクハラが少なくなった一方、身体接触がなくても、言葉のセクハラとして訴えられるケースも増えてきています。最近のセクハラ・トラブルで増えているのは、「疑似恋愛型」と呼ばれるものです。これは上司が女性部下に恋愛感情を抱き、相手の気持ちを考えずにお酒や食事に誘い、その上で性的関係を持とうとすることで、これらもセクハラにあたります」

与える側と受け止める側の認識のズレがパワハラを生む

「パワハラはこの10年間で問題が顕著化してきました。暴力や名誉棄損、人格否定など明らかにアウトな例もありますが、線引きが曖昧な例も多く、実際の判断は難しい問題といえます。部下を思っての厳しい指導のつもりが、受け止める側がそれを指導と思わず嫌な思いをしたとなれば、それはもうハラスメントになり得てしまうからです」

 

最近ではスポーツの世界でそういった問題が多くありましたね。昔は当たり前に行われてきたような指導でも、今ではハードルが低くなって、ハラスメントだと認められる例が増えているということでしょうか?

「はい。過剰に敏感になりすぎているきらいもありますが、これは時代の流れでしょう。かつて自分が、怒鳴られたり、手を出されたりと厳しく指導されてきた人はつい同じような指導法をしがちですが、そうしていいというものではないのです。かといって企業の業績を上げるためには厳しい指導をしなければいけない局面も出てきますから、委縮して部下を甘やかしてばかりもいられない。指導方法や叱り方を見直すほかありません」

 

指導との線引きが曖昧となると、指導だと思って与える側と受け止める側の認識のズレがハラスメントを生み出していると言えるのですね。特に現場のマネージャーは、組織内でハラスメントが発生しないように、相手の感じ方が自分とは違う可能性を踏まえて、相手の受け止め方に配慮したコミュニケーションをとる、ということが必要になってきますか?

「そうですね。普段から部下の性格を理解して相手に合わせた接し方をすれば、部下も上司の期待に応えようと思うのではないでしょうか。そもそも『相手の嫌がることはしない』という人として大事なマナーを守っていれば、本来ハラスメントは発生しないことのはずなのですが、『相手の嫌がること』の基準が人によって異なるためにトラブルに発展してしまいます。それを避けるためには一つの見方として、自分はもちろん、自分の娘やパートナーなど大切な人がされたら嫌なことはしない、ということを基準にするとわかりやすいかと思います」

 

ほかにもある! さまざまなハラスメント

セクハラ、パワハラ以外に組織内で起こり得るハラスメントは、ほかにどんなものがありますか?

「セクハラ、パワハラに派生する形でたくさんあります。たとえば飲み会での迷惑行為や飲酒の強要などのアルコールハラスメント(アルハラ)、妊娠、出産、子育てをしている社員に嫌がらせを行うマタニティハラスメント(マタハラ)、相手を精神的に追い詰めるモラルハラスメント(モラハラ)、男女という物差しで差別をするジェンダーハラスメントが最近では目立ちます。

これらはいずれも、時代的な意識の高まりや、ハラスメントだと認められるハードルが低くなってきている中で生じている問題だと言えます。具体的にどの行動がOK・NGか、ということに注目するよりも、すべてにおいて相手を尊重した対応を心がける必要があるでしょう」

 

もし、自分の組織内でハラスメントが発生したら?

万が一ハラスメントが組織内で発生して訴えられた場合、具体的にどのようなダメージがあるのでしょうか?

「ハラスメントは個人間で発生する問題と考えている人が多いのですが、職場環境の悪化や企業の社会的イメージの低下、多額の賠償金の支払いなど、組織全体で失うものがたくさんあります。マスコミに取り上げられれば、法的にセーフかアウトかという問題以上に、世間がそれを許さないので、大きなイメージダウンになります。賠償金には1000万円単位、海外では億単位という例も少なくありません。また、人材離れも加速するでしょうし、組織の力も弱くなっていきます。そのため、個々人がハラスメントに気をつけるだけではなく、危機管理の問題として組織全体で学び、対処することが大切なのです」

 

もし現場のマネージャーがハラスメントを指摘された場合、どうするべきでしょうか?

「前述のとおり、個人が起こした問題として取り扱うのではなく、会社組織全体の問題として対応する必要があります。そのうえで、マネージャーが自分の言動を振り返って少しでも思い当たることがあるのであれば、とにかく早く、誠実に謝ることが必要です。

いわゆる“逆ギレ”をして相手を名誉棄損で訴えるなどはもってのほかです。なかなか謝らずに居座っていると、後から録音や写真などの証拠が出てきて自分がどんどん不利になり、問題が大きくなっていくからです。しかし、謝ることができない人が多いのも事実。裁判や大問題に発展する前に、とにかく早く誠実に謝るといった初期対応が肝心といえるでしょう」

ハラスメント認定されるハードルが下がっている今、会社に専門家を呼んで勉強会をおこなうなど、会社として新たに取り組みを行う必要性もありそうです。

 

次回は「セクハラ」について、より深く解説していきます。

 

(取材・文=富永玲奈)

 

 

【お話を聞いた先生はこちら】
山田秀雄先生

山田・尾崎法律事務所の代表弁護士。1992年の開業以来、一貫して企業法務,一般民事事件を中心に活動。多数の顧問会社の法律相談・商事事件及び不動産,損害賠償,遺産事件,家事事件などの民事事件の訴訟を手がける。近時はPL問題,民事介入暴力,セクシュアル・ハラスメント,ストーカー,ドメスティック・バイオレンス等の分野についてリスク・マネ-ジメント(危機管理)の観点から、企業の指導にあたっている。NHK,民放をはじめ、ラジオ,テレビにコメンテーターとして出演。また、講演・著作活動の機会も多い。著書に『弁護士が教えるセクハラ対策ルールブック』(日本経済新聞出版社 ※共著)などがある。http://www.yamada-ozaki.com/

 

山田弁護士が教える、マネージャーのためのハラスメント講座
第1回:マネージャーなら知っておきたい! 変わりゆく、セクハラ・パワハラの定義と境界線
第2回:これくらいなら…は要注意! セクハラNG事例から学ぶ対策法
第3回:「厳しい指導」もパワハラ認定? イマドキ社員の叱り方

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