人事部の役割
人事部の役割は、大きく2つに分けられます。1つは企業の経営戦略の遂行に向けて、人や組織が最適な状態になるような諸施策の企画立案と運用です。年度ごとの組織・人員計画の策定、人事諸制度(等級制度、賃金・報酬制度、評価制度、配置転換制度)の企画・運用、採用、能力開発などが挙げられます。他方は、労働関連法規を遵守した上で適切な雇用条件のもと従業員の労務管理を行うことです。後者の労務関連の実務については、業界・業種や規模を問わず必ず対応が必要な業務です。具体的には、労働契約に関する一連の手続きや、社会保険手続、勤怠管理、福利厚生、安全衛生管理、メンタルヘルスへの対応などが挙げられます。厚生労働省 労働基準局 やさしい労務管理の手引き
戦略人事が求められる背景
人事の管掌領域は多岐にわたるため、人と組織の最適化の領域においても労務管理の領域においても分野ごとの専門性が求められます。企業内の人と組織の全般を把握することの難しさもあり、人事部門内でも現実的に施策の連動性がとりにくいという課題もあります。また一方で、事業経営において戦略そのものよりも実行力による差別化の必要性が認識される中で、より経営方針や戦略を実現するための人・組織作りに貢献することの期待が高まり、多様化する従業員の価値観の対応への要請からもより経営視点での人事部の活動が求められています。
戦略人事とは
経営や事業運営に対して、人・組織の観点から提言や施策の企画・運用を行い問題解決する機能を担うことが戦略人事として期待されています。デイビッド・ウルリッチ教授(『MBAの人材戦略』著)が提唱した人事の役割に則って整理してみましょう。
1.戦略パートナー(Strategic Partner)
経営戦略や事業戦略の実現に向けた組織設計や人材配置を行うほか、事業が目指す方向性に従業員を動機づけするような人事的施策の企画、運用を行う。
2.管理のエキスパート(Administrative Expert)
労働関連法規や厚生労働省など行政府の指示・指導を踏まえた人材管理を、法令を遵守しながら効率的に推進する。
3.従業員のチャンピオン(Employee Champion)
従業員の意識を踏まえて、多様な能力4.・価値観を有する従業員に対して、その力を発揮するための環境整備を含めた支援を企画・運用する。
4.変革のエージェント(Change Agent)
経営理念やバリュー浸透など継続的な企業の成長のために求められる組織文化や行動様式の具現化を促す働きかけを行う。