傾聴という言葉の本来の意味は、真剣に聞くこと(大辞林)で、相手の話に耳を傾けて熱心に話を聞くことです。仕事においては、情報や自分の考えを相手に伝えることも重要ですが、相手のニーズや課題を把握するためには、まず相手の状況を的確に把握する必要があります。相手と仕事上で協働していくためには、相手の状況、認識や考え方を踏まえなくては、合意形成をして何かしらの活動を一緒に推進することは難しくなります。そのために、相手の話を聞き、相手が言語化できていない領域も一緒に明確にしていくプロセスがより重要視されるようになりました。そこで、相手から情報や考えを引きだすためのアプローチが傾聴力や傾聴スキルとして、重要視されるようになっています。
傾聴スキルとは
他者と話をしている時には、意識・無意識を問わず言語・非言語での何かしらの反応をしています。傾聴スキルとは「相手にしっかり話を聞いてもらえているという実感を醸成し、相手の考えを深め、説明可能な領域を増やす」アプローチ全般を指します。具体的には、話を聞く上での姿勢、目線、動作などの身体全般の動きによる非言語な反応と言語での応答から、構成されます。相手を尊重しようとする意識や相手との対話の重要性の認識があるからこそ、言語・非言語のアプローチを効果的に活用することが可能になります。
傾聴の効果
「相手が話を聞いてくれていない」と感じた時には、「これ以上話をしてたくない」「必要以上の反応や情報を出したくない」「相手に迷惑をかけるのを避けたい」といった心理状態に陥ることがあります。傾聴をすることで、話し手は「自分のことを大切にしてくれている、認められている」と実感することで、安心感を得ることが可能になります。それによって話し手と聞き手が信頼関係を醸成することにもつながります。また、聞き手が対話を通じて、話し手の言葉を繰り返すことや、質問をすることで、話し手の認識が整理されるという効果もあります。
傾聴の長所と短所から考える活用シーン
上司(管理職)と部下の対話のシーンにおいては、上司(管理職)の方が話をしている割合が多く、部下側は結果的に簡単な応答しかしていないということもよくあります。上司(管理職)の意図に反して部下側は、「自分の話を聞いてくれない」という認識から信頼関係が揺らいでいる場合には、上司(管理職)は部下の話を遮らず話を聞く場面を意識的に増やすことが望ましいでしょう。
また、部下側の考えを引き出したいときや漠然として考えを明確にしたいときなどは上司(管理職)が積極的に傾聴をすることで、一緒に部下自身の考えを明確にすることが可能になります。例えば、何かしらの企画の立案や業務の改善提案などの考えを引き出したい時や問題が発生した時に、何かしらの解決策を部下自身に考えてほしい時などが挙げられます。また、部下自身の今後のキャリアに対する考えなどを確認したいときにも傾聴することが効果的です。
傾聴スキルのトレーニング方法
対話の中の言語、非言語の対応については、自分自身も意識をしていないもののある一定の反応パターンを身に着けているというのが一般的です。「話を聞いてもらえたか、否か」は話し手の感覚に依存する部分もありますが、第三者が傾聴の仕方を評価することは可能です。対話のシーンを観察してもらい、傾聴を阻害する反応を指摘してもらうことで自己のコミュニケーションの癖を認識することが可能になります。課題を明確にしたうえで、日々のコミュニケーションで意識することで傾聴力・傾聴スキルを高めることが可能になります。
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