企業組織において生産性を高めるためには、自分の考えや感情をそのまま表現できるかどうか「心理的安全性」が保たれている環境であることが重要だと言われています。Google が発見した成功するチーム作りの鍵の1つとして、1番最初にその重要性が指摘されています。地位や評価において不利益を被ることなく、リスクをとる行動ができるような環境を整えることの必要性が強調されていますが、そのベースになるのはお互いが率直に話をできるような関係性のベースがあることです。
日々の業務の中でマネージャーは様々な業務で時間に追われがちな状況になりますが、限られた時間の中でも、部下としっかり意思疎通をして部下が「上司に話をきちんと聞いてもらえた」と感じられるようにするには、「共感的な話の聞き方」をすることが求められます。
今回は、「共感」とは何かを改めて考えながら、共感的に話を聞く上で留意商品えおきたいことを考えてみましょう。
共感の構成要素
サイモン・バロン=コーエン『共感する女脳、システム化する男脳』によると共感には2つの大きな構成要素があると言います。
①感情的な要素で他の人の感情が動くのを見て、感情的な反応をすること
他者がある感情を持った時に、同じような気持ちを抱くことです。
②認知的要素に関わるも他人の気持ちを理解し、相手の立場に立ってものを見る能力
スイスの発達心理学者ジャン・ピアジェは、「非自己中心的な反応」と呼んだもので、自分の価値観や感覚を一度棚上げして、相手の環境や感じ方を前提として想定しながら、相手だったらどのように感じるか、考えるかをイメージすることです。
例えば、これまでにスケジュールのタイトな業務で何かしらの失敗をした経験があり苦手意識をもっている相手が、同じように短い納期で多くの業務量をこなさなければならない状態になったことをイメージすると、その業務を担当することに気後れすることや過剰な心配をすることが想像できます。このように、前提として相手の感じ方の状態を想定したときに、ある事象が生じた場合、その相手がどのような感情をいただき、行動をするかを推測することができます。
共感的に話を聞くためのポイント
コーエンによれば、①感情的要素、②認知的要素に加えて、③同情が共感の構成要素だと定義しています。①感情的要素は意識をしなくても、他人の感情を知ることによって自分も感情が動かされるという経験は誰しもがあるでしょう。③同情は、相手のポジティブな感情を受け入れて共鳴することやネガティブな感情に対しては和らげたいと思うという聞き手が側の感情的な反応をすることです。①感情的な要素や②認知的要素から、③同情が引きこされるという構造になっているのが共感の正体だとされています。
仕事の場においては、①感情的要素の動きや③同情の気持ちを抑制した方がよいと考える向きもありますが、1対1でマネージャーと部下がキャリアについて相談する時や、業務を主体的に部下に進めることを支援したいときなどはこうした共感的なアプローチが有効に働くと考えられます。
意識したい4つのポイント
●安心・健全な環境づくり
・部下に向き合い、話を聴く姿勢を作る
・気持ちや考えを率直にやり取りする場であることを確認する
●部下の話を聞く
・部下の話を1回受け止めて、感情的要素で感じた自分の気持ちを伝えながらコメントする
・部下に質問し、自分の理解を確認・検算する(同情的に感じられるまでしっかり話を聞く)
●相手に分かりやすく伝える
・認知的要素でイメージ、予測したことを相手に伝える
・部下一人ひとりにあわせて自分の言葉で伝える。
・「なぜ、何を、どのように」という話の筋を明確に伝える。
●相違点を特定し合意点を探る
・意見の違いの背景にある考えを特定する。
・背景含めて合意点を探り、落としどころを一緒に探る