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Key for Management

成果と生産性を高め、力を引き出すマネジメントのために produced by KAKEAI

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人材育成

部下に相談されたとき、どう対応すればいい? マネージャーなら覚えておきたい、コーチングの技術とは~後編

更新日:

部下をマネジメントするときに、覚えておくとよい対話のスキルとして「コーチング」があります。マネージャーがコーチングをおこなう目的は、部下が自力で目標や課題を解決するための道のりを見出し、前向きに行動できるようになること。それはもちろん、相手をコントロールするわけでも、手取り足取りやり方を指導するわけでもありません。

マネージャーはあくまでサポート役です。サポート役として、部下から話を引き出すような対話をするためには、「話を聴く力」と「質問する技術」のふたつが必要になります。

コーチングに必要な技術①「話を聴く力」

コーチングは、相手の話を聴くことで、相手に自ら考えさせ、話をさせる技術です。まずはしっかりと相手の話に耳を傾けることから始まります。

「聞く」と「聴く」の違いは何でしょうか? 一般的に「聞く」は自然と耳に入ってくることを差しますが、「聴く」は身を入れて耳を傾けること。つまり、自主的に相手の話に耳を傾ける場合は「聴く」を用います。

コーチングで必要なのは、この「聴く」力です。「話を聴くだけなら、いつもやっていることだし簡単」と思うかもしれません。でも、相手に「君ならできると信じているよ」という姿勢を見せながら聴くためには、ただうなずいているだけでは足りません。

もともと、コーチングはさまざまな心理療法やカウンセリングのメソッドをもとにして発展しました。心理学者の河合隼雄氏は「聴く」ことについて、次のように話しています。


「だから『聴く』というと、これほど簡単なことはないように思われますけれども、実は『聴くこと』ほど怖いことはないと思います。そして聴かれるほうにとっても、『聴かれること』ほど怖いことはない。これは、本当にやってみられるとわかります」

「だからもっと極端な言い方をすれば、相手が言葉に出していない気持ちさえ感ずるくらいの聴き方ですね。『こうしなさい』とか、『こういう方法がありますよ』ということを言わないで、ひたすら聴く、そして向こうが自分の方法で立ち上がってくるのを待つんです」

――『河合隼雄のカウンセリング入門』河合隼雄(創元社)より


一対一で向き合い、相手をとことん信じて話を聴くのは難しいことですが、一方で真剣に向き合ってくれている人を前に、本心を語るのもまた難しいことと言えるでしょう。会社であれば「自分より立場が上のマネージャー相手に、余計なことを言ったら評価が下がるのでは」と心配する部下も多いと思います。

そんなときは、相手が話しやすいように工夫しながら聴くことが大切です。相手の話に合わせ、急かさない程度にうなずくことを意識する。相手が言葉に詰まったときも、軽くほほえみながら静かに待つ。時には、大きく笑ったり、目を見開いたりしながら「面白いね!」「そのあと、どうしたの?」と興味を示す。相手が話すペースに合わせ、あいづちも緩急をつける……など、話を聴くときはさまざまなリアクションを試みてください。

さらに、沈黙の時間も大切です。相手が答えを探して考え込んでいるときに「沈黙を埋めなきゃ」と話しかけてしまうと、せっかくの思考タイムが途切れてしまいます。沈黙に耐えられない人は多いですが、口から言葉が出そうになったときもぐっと堪えて、相手を信じて少し待つことを意識しましょう。

できれば一度、プライベートの場でもよいので、人と話しているときの自分を録画・録音してみるとよいでしょう。自分が威圧的だったり、言い方がきつかったり、話をさえぎっていたり、不快感を顔に出していたりと、予想外の癖が見つかることもあります。

コーチングに必要な技術②「質問する技術」

コーチングの際は、時に質問を挟むことで、相手の話をうながします。このときの質問は、相手がまだ言語化できていない感情や思考を整理できるように、気づきを与える質問です。そのためのテクニックのうち、代表的なものを紹介します。

具体的な言葉を引き出す質問

たとえば、リーダーを任された部下が「自信がないし、不安なんですよね……」と言って、黙り込んだとします。その場合「どういうときに、自信がないと感じるの?」「不安に感じるのは、どうして?」「どんなリーダーになりたいのかな?」などと質問をすることで、感情や思考を具体化していきます。

それを話すうちに部下自身も「自分はこういうリーダーを目指していたんだ」とか「こういう面に自信が持てないんだ」と気づくことができ、目標や課題に対して、今後どう動けばいいかが見えてくることがあります。

立場を変えて考えさせる質問

たとえば、リーダーになれるか悩んでいる部下は、現状の自分はすぐに変われないと思っているので、どんなにコーチングで質問を重ねても「どうせ自分には無理」という思い込みが変わらない場合があります。そんなときは視点を変える質問がうってつけです。

「あなたについているチームメンバーから見ると、今の自分はどう思う?」「あなたを抜擢した上司から見たら、今の自分はどうかな?」など、客観的視点から自分を見る方法です。そのときに「もっとこういう言動をしてもらえたら」「こういうリーダーならついていきたい」など、具体的な姿が見えてくると、これから取り組むべき課題が見えやすくなります。また、プラスの意見もぜひ求めてください。客観的に見て「ここは頑張れている」という部分も見つかると自信がつき、前向きな意見を出しやすくなります。

なお、質問をするときに「誘導の質問」をしてしまう人は多いものです。マネージャーからすれば、つい「この人にはこうなってほしい」「この人にはこれに取り組んでほしい」と感じて、その方向に導きたくなることもあるでしょう。でも、それではコーチング本来の目的からは反れてしまいます。コーチングでの質問は、相手自身の力で気づかせるためのものと心得ましょう。

代表的なフレームワーク「GROWモデル」とは

コーチングの手法のひとつに「GROWモデル」があります。このフレームワーク(会話のモデル)にのっとっておこなうと、スムーズに話を進めやすくなります。覚えておきたいポイントは、次の5つです。

G:GOAL(目標や目的、ゴール)
…本人が「今後、どうなりたいと思っているのか?」を引き出します。このときに「なぜ、そうなりたいのか」「そうなると何が変わるのか」も問いかけると、具体化しやすいです。

R:REALITY(現状)、RESOURCE(資源)
…ゴールに対し、現状を聞き出すことで、ゴールと現状とのギャップを相手に自覚してもらいます。また、現状使える資源(人や金額、時間、スキルなど)も確認します。

O:OPTIONS(選択肢、打ち手)
…ゴールに向けて、具体的にどんな方法があるのかを相手から引き出します。できる限り多くの打ち手を、本人に自由に考えてもらいます。

W:WILL(意志)
…上記OPTIONSのなかから、「どれならやりやすいか」「どれならヤル気が出るか」などを問いかけながら、実行に移すものを選んでもらい、最後に意志を確認します。このとき、期日ややり方なども、具体的に落とし込むとよいでしょう。

コーチングをおこなう際は、この5つのポイントを押さえておくと、相手に質問をしやすくなります。また、基本は「聴く」「質問する」の繰り返しですが、使える資源を確認したり、スケジュールに落とし込んだりするときは「ひとつ、アドバイスするよ」と言って、助言を挟んでもよいでしょう。

コーチングを実践するためには、さまざまな専門書が助けになります。なかでも谷益美氏による『リーダーのための! コーチングスキル』(すばる舎)は、チームを率いるマネージャーが実践するためのテクニックが満載です。

部下の成長は、結果的にチームの生産性を高めます。コーチングによって、部下は自ら、課題の克服や目標に向けて積極的に行動できるようになり、その行動がひいては部署や会社全体の成果につながっていくのです。部下との対話に悩んだときは、コーチングの手法を学んでみてはいかがでしょうか?

(構成・文=富永明子)

※参考資料
『リーダーのための! コーチングスキル』谷益美(すばる舎)
『クライアント満足を10倍にする カウンセリングとコーチングの合わせ技』倉成央・谷口祥子(秀和システム)
『河合隼雄のカウンセリング入門』河合隼雄(創元社)

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