前向きに仕事に取り組んでいく上で必要な自信ややる気を高めるために、マネージャー(上司)が部下にどのように関わるとよいかを考えたときに、自己肯定感と合わせて意識したいのが自己効力感です。
自己効力感とは
心理学者のバンデューラが提唱した概念で、何かに取り組む時にこうすればうまくいくというイメージをもって自分がそれをやっていくことができる感じられる期待や自信のことを自己効力感と言います。自己効力感が高ければ、少し難しい問題や課題に対しても、主体的に取組みその解決や達成のために継続的に取組み続けることができます。つまり、難しい状況になってもそこから逃げずに立ち向かっていくための自己認識と言い換えることができます。自己肯定感が自分の存在自体に対してのポジティブな感情であるのに対して、自己効力感は、何かしらの課題に取り組むうえで自分がそれを解決・達成できると自分自身に期待できる感情です。
自己効力感を高めるには
自己効力感を高めるには4つの方法があると言われています。
自分自身が成功・達成体験をする
4つの方法で一番重要だと言われているのが、本人の「成功・達成体験」です。結果として何かしらの課題を解決できた時に、自分の判断や取り組み方の良かった点も含めて「成功・達成」できたことで自分は「できない、難しいと感じていたことでも、やり遂げることができた」という自信が湧いてきます。
マネージャー(上司)にできること
日常業務の中では1人の部下に対して、複数の仕事を頼むことになりますが、部下の強みやスキルを活かして「少し背伸びをすれば頑張ってできる仕事」をアサインします。途中で分からに事や困ったことが生じたら適切なサポートをしながら、その業務を完遂してもらうことで部下は「この点を工夫したから、注力したからうまくいった」という成功体験を得ることができます。
近くの誰かの成功を聞くことで代理体験する
自分自身が体験したことではなくても、親近感を感じられる人が成功したということを見聞きすることによって「自分にもできるかもしれない」という気持ちが湧いてきます。成功した結果だけではなく、そのプロセスの紆余曲折を知ることで、「自分が取り組むとしたらどうするか」「自分にも達成できるかもしれない」という気持ちになります。
マネージャー(上司)にできること
第三者の成功体験を代理しながら、「できるかもしれない」というイメージを持つには、その第三者に部下自身が親近感を持てることが条件になります。親近感を強く感じれば感じるほど、代理体験から高まる自己効力感も高くなります。例えば、プレゼンテーションに苦手意識を持っている部下に対して、「Aさんも人前で話をするのが苦手だったけど、練習をして200人以上の人前でもプレゼンが上手にできるようになった」など部下との共通点とあわせて伝えられると良いでしょう。
期待を言葉で伝えるー言語的説得
周囲の人から肯定的な評価や励ましの言葉を掛けられることでも自己効力感が高まります。「大丈夫、きっとできるはず」「〇〇ができたから、これもできるはず」など言葉で伝えることで本人の認識も肯定的になります。
マネージャー(上司)にできること
言語的説得の効果は身近な人ほど高くなります。普段の取組みを見ているからこその声かけに対しては本人も納得感を持ちやすいためです。「いつも〇〇だから、今回も大丈夫」「これまで〇〇したから、きっとできるはず」など過去や日常の出来事に紐づけながら伝えることで効果がより高まります。
リラックスして安心できる状態にすることー生理的情緒的高揚
人は緊張や焦りを感じていることを身体的な変化を含めて認識するとさらに不安な気持ちが高まります。まずは、緊張や焦りを感じている自分を客観的に認識したうえで、リラックスできるように整えることで、効力感も高まっていきます。
マネージャー(上司)にできること
部下が緊張して顔が紅潮している、汗をかいているなどしているのが分かった時には、リラックスできるように声をかけてあげましょう。
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